あなたは「自己愛」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?
自己愛には健全な自己愛と、不健全な自己愛があるのですが、タイトルの自己愛人間とは後者のことを指します。
こちらのサイトではよく取り上げるのですが、一言で言えば「自己中で冷たい人」のことです。
誰にでもこのような面は、あると言えばある(私はあるっ)のですが、それが社会生活とか日常の人間関係でトラブルを巻き起こしてしまうような人を、自己愛性パーソナリティー(障害)という診断を受けることがあります。
これも性格の一部なのですが、あまりにもこの傾向が強くなると、非常に生きにくくなって、恋愛や結婚などもうまくいかず、子育ても難しいということになります。
今日は、このような自己愛について、すごく詳しく書いた書籍があるので、こちらのご紹介とポイントだけお伝えしたいと思います。
とにかく中身がぎっしりで、読んだ後の満足感はかなりのものです。
今までも、自己愛については色々と取り上げていますが、特にこの書籍の中で、際立ったキーワードがあったので、その説明をしたいと思います。
まず、さっきも出ましたが、不健全というキーワード、続いて、恥、また、母親、そして自己愛のドラマ、連鎖、自己愛のワナ、2歳児、妄想症、100人に一人、といった感じです。
最後にこのような人への対処法をお伝えしたいと思います。
では、早速行きましょう。
1.世代間の「連鎖」
100人に一人、恥
先ほど、「自己中で冷たい人」と言いましたが、このような不健全な自己愛を持つ人の親は、大抵が同じように、自己愛が不健全なのです。
これが連鎖ということなのですが、この性格傾向がなかなか改善されないのは、「本人が認めないから」とも言われます。
米精神医学会では、このような自己愛人間(自己愛パーソナリティー障害)は、100人に一人と言われます。
でも、周囲を見渡すと、実際にはもっと多いと思いませんか?
これは、自己愛人間の特徴として、非常に恥の意識が強く、実はそれを隠すために人を利用したり、バカにすることで必死で自分を守っているからなのです。
つまり、自分を「おかしい」と認めるのは、恥なのです。
だから診断項目への答え方も、「おかしさ」を避ける傾向にあるのです。
そもそも、その恥を認めないために、奇妙な言動をしているので、他人が指摘してもより強く防衛が働いて、爆発的な怒りなどが出てしまうのです。
では、どうしてこんな性格傾向になったのかを考えていきます。
2.「不健全」な自己愛
先ほど自己愛人間は、不健全な自己愛だと言いましたが、それは一体どういうことなのでしょうか。
まずは、健全な自己愛について、簡単に説明します。
健全な自己愛
自分自身の感情を感じることができ、また相手の感情を感じることもできます。
また、夢見る力を持ちながら、現実と幻想を区別できる能力があります。
このような自己愛は、本当の自尊心の上に成り立っています。
これに対して、不健全な自己愛とは何でしょうか?
不健全な自己愛
精神面、情緒面が完全には成長していません。
よく2歳児のままなどと言われます。
また、能力や実績がないのに「素晴らしい人間」だと思い込むところがあります。
でも、それを誰かに指摘されるとさっきも言ったように「恥」の意識が表出して、非常に敏感に強く反応します。
また、自分と他者の区別がつかないので、平気で相手のものをもらおうとしたりします。
そして、この不健全な自己愛を持った理由が、母親との関係が元になっているので、母親または父親も自己愛人間である可能性が高いのです。
そして、この親から離れたとしても、同じような自己愛人間の餌食になりやすい傾向があります。
では、さっきから言っているような「恥」の意識は、どうやって生まれたのでしょうか?
自己愛の傷つき
覚えているかどうかは別として、1歳くらいの時に、子供が母親と楽しいことを共有しようとした時に、拒否されたり無視などをされると、子供の万能感は崩れて「恥」の意識が芽生えます。
これが自己愛の傷つきです。
本来ならそれに気づいて、すぐに母親などがフォローしていれば、なんでもない出来事として終わったはずですが、きっと繰り返し繰り返し同じような拒否や無視を経験したので、傷が深くなったと考えられます。
そして、生涯にわたってこの「恥」を避けようとします。
それが人生の目的のようになってしまうのです。
これが、偽りの自己です。
それが自己愛人間の特徴である、冷たさとか怒り、非難、反抗などという形になって、恥をかかないように必死で守っているのです。
それだけ傷が深いということです。
ところで、ここに風船があります。
これは、子供の頃の万能感とか誇大感だと思ってください。
子供はある程度までは、自信満々です。
しかし、この風船の取りあつかいによって、その後は大きく性格が変化します。
このような万能感とか誇大感は、いつまでもそのままだと、ちょっと勘違いした人になってしまいます。
これを、自己愛人間では特権意識と言ったりしますが、「自分は優遇されて当たり前だ」というような思いを、大人になっても持ち続けてしまいます。
逆に、この風船をバンっとひと思いに潰してしまうと、一気に自信を失ってしまいます。
また、そのあとに放置されたりしたら、ますます「自分は価値がない」というような意識が芽生えます。
理想は、少しづつ空気を抜いていくような、丁寧な取り組みが必要なのです。
この時に、親が逆に怒ったり、無視をしたり、大笑いしてからかったりすると、子供は傷つきます。
この恥の意識をバカにしていると、子供のその後の人生は、暗いものになってしまうのです。
やたらに人の目が気になったり、恥をかきたくない気持ちがつよい人は、このような傷がまだ痛いのだと思います。
このような子供の、上機嫌な状態から、少しの恥を体験して、それを癒すまでのプロセスがうまくいくと、恥の感情を処理する方法がそこで学べます。
これで、現実的な自己感を持つようになります。
それができない子供は「自分が悪い」と結論づけてしまい、その現実があまりにもつらいので、幻想を見て自分を慰めます。
では、このように子供に恥をかかせてしまう母親は、どんなことになっているのでしょうか?
3.「母親」が自己愛人間の場合
さっきから言ってますが、自己愛人間はそれに気づくこともなく、ずっと世代間連鎖をしている可能性があります。
だから、それに気づかない限りは、母親を見れば子供がわかるし、子供を見れば母親がわかるのです。
では、自己愛母親は不健全な自己愛を持ったまま、どうして母親になろうとしたのでしょうか?
これは、「自分のため」と考えられます。
つまり、完璧な母親像を映し出すために、完璧な子供が必要だと思ったということです。
だから、子供は完璧でないと困るのです。
そうしないと、ずっと隠し持っている、恥の意識が出てきてしまいます。
でも、実際に子供が完璧であっても、そうでなくても、実際の子供にはあまり愛情を抱かないのが自己愛人間の特徴です。
子供よりも、「自分が母親になる」という体験が重要なのです。
また、生まれたての赤ちゃんの時は、非常に手間がかかるので、「面倒だ」と思うことも多いようです。
ただ、共生期(2ヶ月から5ヶ月)に入ると、赤ちゃんのまっすぐな眼差しに癒されて、融合(一体化)したい(手放したくない)気持ちが芽生えます。
そして、今度は自分の中に取り入れようとしますが、これが母子の分離を難しくしてしまいます。
まもなく赤ちゃんは、母親以外にも人がいることに気づき、興味を持ち始めますが、自己愛の強い親は、子供を失うことの怖さと怒りを感じるようになります。
ここで、過剰に恥の意識を植え付けて、自立の機会を制限するか、子供を支配しようとします。
これが自己愛のワナです。
ここで成功したやり方は、成人になった子供に対してさえも、同じ方法でワナにかけようとしているはずです。
つまり、自分にとってプラスになることだけを褒めて、自立するようなことを否定するなどして、子供を操るようになります。
こうして、自分と同じような自己愛人間を、育ててしまうのです。
父親が自己愛人間の場合
また、母親ほどではないですが、父親が自己愛人間だった場合、父親は自分のことに夢中なので、母親は子供に頼るなどをしてしまい、子供は生涯にわたって母親から縛り付けられる可能性が高まります。
本来の父親は、母子分離の手助けをするのが正常な役割です。
でも、逆に母子を融合させる手助けを、してしまうようなものです。
このような自己愛の強い親によって、どちらかの子供になります。
1.偽りの成熟を示す子供
これは、良い子などが代表するような、母子逆転のような子供です。
大人になっても、誰かの役に立つことでしか、自分の存在を認められないようになります。
2.特権意識モンスターの子供
大人になっても、根拠のない誇大感があり続け、勘違いしているタイプです。
どちらも自己愛人間であることは確かで、大人になっても自己愛人間に振り回されることになります。
4.老化して「妄想症」に?
妄想症とは、自己愛人間が歳をとって、若さを失い、美しさなどを失うと,
内的に破綻してしまって、このような症状になることが多いそうです。
妄想とは、誰かが自分を襲ってくるような勘違いのことです。
お年寄りの事件などは、この妄想症が多いような気がします。
自己愛人間の一番の弱さは、この加齢だと思ってます。
気持ちは2歳児なのに、鏡に映る姿はどう見ても老婆だったりすると、心の均衡が保てなくなるのでしょう。
だからギリギリ限界まで、若作りする人も多いと思います。
もし、あなたが自己愛人間ならば、親の姿を見ると、自分が何も改善せずに加齢をした姿を、見ることができるでしょう。
その年齢まで、自己愛人間でいられたことも、ある意味「特殊な環境だったからこそ」と言えるかもしれません。
ただ、「老年になって現実を見るのか、若いうちに知っておくのか」と考えると、若いうちに知っておく方が、その後の人生は全く違うものになると思います。
5.自己愛人間への対処法
では、このような自己愛人間にどう対処していけば良いでしょうか?
そもそも論、なのですが、自己愛人間に悩んでいるということは、あなたも同じ自己愛人間であるという気づきが、非常に重要になります。
もし、あなたが健全な自己愛であるなら、すでに自己愛人間を見抜き、関わらないようにしているはずだからです。
だから、自己愛人間に対処しつつ、自分も振り返るという、二重の作業が必要です。
もしかすると、今まで自己愛人間を、「魅力的だ」と思っていたかもしれません。
実は、自己愛人間は、有名人や経営者などに非常に多いのです。
インスタで自撮りなどをしている人は、かなりの確率で自己愛人間です。
でも、あなたが本当に自己愛人間のワナにはまって、自己愛ドラマに巻き込まれるのが嫌なら、これからの方法を試してください。
また、それと同時に自分も同じことをしてないか、振り返ることも重要です。
1.自分を知る
まず、当たり前ですが、親と分離した一人の人間になることが、最初にやることです。
親と融合したままだと、他の自己愛人間からも見抜かれ、同じような扱いを受けるのです。
心理学者のエランゴラムは、このように言います。
情緒的に独立したひとりの人間として、心の平静を保つために必要なのは、相手から挑発された時に「闘争的でない断固たる態度」を取り、「穏やかな無関心」で対応すること
ということです。
闘争的になると、感情的になるので、自己コントロールが難しくなります。
それは、自己愛人間にとって、非常に有利な立場にさせる(コントロールされやすくなる)ことになります。
次に、
2.現実を受け入れる
「私の親は、未熟な精神構造の持ち主だ」と自覚することです。
さっきも言いましたが、2歳児だと思うことです。
でも、そこで止まったまま成長しないことを選んだのは、間違いなく本人の意思なので、それをあなたがフォローすることはないのです。
著書ではこのように書いてます。
私がどう努力しても親は変えられない。
私は親が望むような完璧な人間にはなれないし、親を満足させて無条件の愛を勝ち取ることもできない。
親が私を愛せず、敬意も示せないのは、私の人間的な価値とは何の関係もない。
ということです。
きっちりと境界をつけることが大事だとわかります。
次に、
3.境界を設定する
まず、最初に自分が許容できる言動を、整理しておきましょう。
それは逆に、許容できない言動を、自分で決めることです。
そして、自分の身の守り方を知っておくことです。
自分の身の守り方とは、昼しか会わないとか、家を出るとか、それぞれ事情が違うのでなんとも言えないですが、自分でルールを決めるしかありません。
つまり、親の言動をやめさせることを考えるのではなく、親の言動に振り回されない方法を、これからは考えていくのです。
親の言動をやめさせようと考えることこそが、親子が融合した状態で境界がない証拠なのです。
いかがでしょうか。
今まで言ってきたように、自己愛は自分で認めることが何よりも難しいので、あなたがそれに気づいたのであれば、すでに不健全な自己愛から、抜け出している途中なのだと思います。
あとは、自信を持って自己愛のワナや自己愛ドラマに、付き合わされないようにすることです。
また、いくらダメな自己愛人間であっても、その性格を変えようとしたり、一緒になって感情的に争うのは、すでに境界を犯されているのであり、あなたもその境界を積極的に侵しているのかもしれません。
まずは、自己愛人間というフィルターで、人を見るというのが、このような人からの利用とか搾取から、身を守る方法なのかもしれません。
また、これは日本だけでなくアメリカでも自己愛の問題は、大きな問題だと受け止められていることがわかります。
これも、「親業」という仕組みを、いつの間にか親が自分たちの都合が良いように、解釈をして取り入れてしまったようです。
これは、教育にも影響されています。
まさに子供のためではなく「自分のため」に、育て方を捻じ曲げてしまったことがわかります。
この悪影響は、子供のような大人とか、親になりたくない人の増加など、いろんなところで問題化しているように感じます。
以上で、自己愛人間への対処法を終わります。
ありがとうございました。