このブログを検索

2021年4月2日金曜日

愛着アプローチ法


 あなたは、愛着という言葉を、聞いたことがありますか?


愛着とは、主に親などの養育者との関係の中で生まれる、安心できる関係性のことです。


これは、人間にとってその後の人生を大きく左右することになります。


悩みを抱えがちな人や、メンタルを病む人の多くは、この愛着がうまく築けなかった人に多いと、私は感じています。


こちらでよく取り上げる、ACもまさに愛着がうまく育つための環境がなく、そのような環境で生き延びる方法を覚えた結果、今でもいきづらい人のことだと、捉えています。


つまり、愛着を育てることができたら、生きるのもかなり楽になってくると思います。


今日は、そんな中で、愛着を育てるための方法、そして、特に自分できる方法を、お伝えしたいと思います。






愛着ができない理由


ところで、愛着についてあなたは何かしら知っていると思います。

でも、世の中には「愛着」と聞いても、意味がわからない人も多くいます。

この差は何だと思いますか?

「愛着」という言葉を知っているということは、(これは他のことにも言えますが)過去にそのことについて、立ち止まったか悩んだかによって、「愛着」という言葉にたどり着いたように思うのです。

それとは逆に、全く知らない人もいます。

そのような人は、きっと愛着について、立ち止まったこともなく悩んだこともない……と考えられます。

よく、子供が「愛着障害の疑いがある」と誰かに指摘されて、急いでネットで調べている人などは、まさにその典型だと思います。

私が重要だと思うのは、自分から「おかしい」と立ち止まった人かどうか……です。

つまり、気づきがある人は今は愛着がなくても、いつかは手に入れられると信じてます。

すでに気づいている人は、この時点で道半ばまで来ているということです。




安全基地と危険基地

ところで、あなたは「安全基地」を知ってますか?

安全基地は、まさに子供が秘密基地を作って遊ぶように、そこにいる限りは鬼は入ってこれないというような、まさに安全な場所です。

鬼が入ってくるならば、安全基地の管理人である親などが、すかさずそれを阻止してくれます。

だから安心して遊ぶことができます。

学校などでいじめられていても、家に帰ってきたら元気を取り戻すことができるのです。

でも、その場所の管理人が、危険を伴うことをしてきたらどうなるでしょうか?

それはそれは不安だし、怖いと思うのです。

これがまさに危険基地です。

でも、家の外からは誰も見えないので、そこが危険基地だと知っているのは、家族だけになります。

もし、あなたがもしくは子供が、本音を言わずに表面的な対応をしているなら、そこは危険基地の可能性があります。

なぜか?

危険だと感じているからです。

この思いはどうごまかしても、本当のことなのです。

つらければつらいほど、危険な人物にはつらいとは言えなくなります。

これこそが、愛着を育てるための安全基地を作ることに失敗した、ということになります。

この問題は、幼児期が終われば関係なくなるものではなく、大人になってもずっと人に心を開けずに、信頼関係の構築ができなくなってしまうことが、大きな問題です。

そして、そのまま結婚などをすると、同じように子供も信じられなくなったりして、愛着をうまく育てられなくなってしまうのです。


逆に、愛着が安定していると、安心感や自己肯定感が高まって、情緒的にも安定します。

さらに、知的・社会的にもどんどんチャレンジしようという気持ちになっていきます。

それは、失敗をしても揺らがない安全基地によって、自分を信頼できるからです。

そして、どんどん活躍の場を広げていけます。



不安定な愛着を持つ人


では、不安定な愛着を持つ人とは、どんなことになっているのでしょうか。

これは、あなた自身にも言えることかもしれません。

ただ、最初に言ったように「それに気づいているかどうか」が大事だということを、覚えておいてください。

不安定な愛着を持つ人は、世代間の連鎖という言葉を使うことも多いですが、その人も安全基地による支えを必要としている人、そのものです。

だから、自分で誰かを守ってやるなどできるはずがないのです。

相手が自分の子供であっても、その子が不調になってしまうと本来なら心配するものですが、不安定な愛着を持つ人は、安全基地が壊れていく恐怖が先に立ちます。

だから、その子供以上に不安になったり、心配したり、逆に腹立たしく感じたりしてしまうのです。

つまり、子供のSOSを、自分に対して脅かされたとか、足を引っ張られたとか、ないがしろにされてしまった、見捨てられてしまったという風に捉えるのです。

本来なら、不調を訴える子供からすると、最も優しさとか思いやりを求めるときに、さらに追い詰めたり、キレたりしてしまうのです。

このようなことが度々起こると、さすがに子供も「この人には頼れない」とか「この人はちょっと危険」などと無意識のうちに感じて、心を閉ざしていきます。




愛着の克服に必要なもの


今までいってきたように、不安定な愛着の元で育つと、自分も不安定な愛着になるという、自然な流れがあることがわかってきたと思います。

ただ、あなたがこの文章を読んでいるということは、自分に気づきがあり、すでに改善の道を半分くらいまで自分の力で登ってきていると思ってます。

つまり、それだけでも世代間の連鎖を断ち切り、自分の力で人生を切り開く力があるということです。

その上で、さらにその速度を速めていくには、どうしたらよいでしょうか?

このようなレジリエンスとか克服する力がある人の特徴として、このような言葉を使うことがあります。

リフレクティブ・ファンクションです。

これは、恵まれない環境でも、愛着が安定している人に共通している点として、リフレクティブ・ファンクション、つまり振り返る力が高いと言われてます。

また、不安定な愛着の人が、安定型の愛着に変化するときに高まるとも言われます。

これは、人間にとって非常に高いレベルの能力だと思います。

つまり、普通の人にはなかなか手に入れられないものです。

このリフレクティブ・ファンクションには、言葉の通りで反省とか振り返る力という意味があります。


これは、自分を責めるのとは全く違います。

自分にどんなことが起きていたのか、その時の感情はどうだったのか、などを正確に振り返ることです。

これが意外にできないものなのです。

ただ、私がいろんな方との交流の中で感じているのは、この能力は男性もしくは論理的な人などが強みがあるかも、ということです。

よくコメントなどをいただく中で、特に男性に多いのですが、長い潜伏期間を経てある日突然「覚醒」される人が多いことに気づきました。

これはどういうことかというと、長い時間をかけてリフレクティブ・ファンクションをして、何か行動を起こして、どんどん状況が変わっていくということなのです。


これは、自分のこともそうですが、自分のことを振り返ることができるようになると、次は相手からの視点で振り返ったり、全く違う人から視点で振り返ることもできるようになってきます。

  1. 自分を振り返る
  2. 相手の視点で振り返る
  3. 第三者の視点から振り返る

視点を変えて振り返る、これは自己犠牲になることではないので、そこは注意してください。


認知の三角形



これは、認知の三角形という図です。

こちらのサイトに来る男性の多くが、なぜある日 覚醒するのかというと、この感情と認知と行動の中で、どんどん認知を増やしていったからだと感じてます。

認知というのは、物事の受け止め方のことです。

この認知を、いろんな動画とか書籍などによって増やしていき、自分のこだわりから解放されていきます。

そして、「こんな考え方もあるんだ」と自分の思考を柔軟に広げていきます。

その結果、何かのきっかけで「そうか!」というようなブレイクスルーを体験して、自分にとってベストな答えを見つけます。

それは、親との話し合いとか、自立するとか、トラウマ返しなどかもしれません。

これは人によってそれぞれで、正解は本人しかわかりません。

その結果、今度は認知の三角形の中の、行動に移していくのです。

だから、パパッと解決してしまうことがあるのです。

逆に、私もそうですが女性は、この感情の部分だけにとどまって、溺れてしまうことが多いです。

そして、泥沼のようになかなか抜け出せなくて「無理かもしれない」と思ってしまうのです。

このようなかたは、ぜひ人を動かすのは感情だけでなく、認知と行動も同じくらい使っていく必要があることを、頭のどこかに置いておいてください。

そして、感情的になったときに、「認知は使ってる?」とか「行動できることは?」と視点を変える工夫をしてみてください。

これができるようになると、覚醒する可能性が高まります。



具体的な愛着を改善するアプローチ


不調を感じる人やSOSを出す人が子供の場合は、二つの方法があると言われます。

1. 愛着安定化アプローチ

こちらは、親などの代わりに臨時で安全基地を作ってあげることになります。

カウンセラーなどが、その子供の良い点に注目して関わって、安全基地を作ります。


2. 愛着修復的アプローチ

こちらは、親(パートナー)などの支え手をサポートしたり、トレーニングすることが中心のアプローチ法です。

親などが気づいていたり、柔軟な思考である場合はこれも可能です。

ただ、気づきがないと難しいでしょう。

これに対して、不調を感じる人やSOSを出す人が大人の場合は、これにプラスして自分でもトレーニングをしていきます。


3. 両価型愛着・二分法的認知改善プログラム


これは、先ほどリフレクティブ・ファンクション(振り返る力)と言いましたが、これを鍛えて、自らの力で愛着を安定化していくという方法です。

特に、大人の愛着障害の中でも「不安型」「こだわり型」と言われる人に向いてます。


具体的にやること

両価型とはアンビバレンスつまり、本心とは逆の行動をとるという特徴があります。

これは、虐待(過保護も含めて)されたか、気分で養育態度を変えられて育った可能性があります。

だから、本心のままだと傷つくので、予測のできないことを受け入れるために身につけた生き方だと思ってください。

これは、自分が知らず知らずのうちにやっている反応の正体を認識することが重要です。

そして、それに気づけば反応を変えることができるようになります。

その一つ一つの成功体験で、「人生はうまくいくことができる」という実感を生みます。

特に、このようなタイプは、過剰に反応することが多いので、意識して「バランスよく」というのを心がけると、驚くほど周りの反応も良くなって生きやすくなります。


これは、自転車の運転を覚えた時を思い出して欲しいのですが、自転車に乗れるまでは大変ですが、一度乗れたらよっぽどのことがない限り忘れないものです。


4.回避型愛着・回避性パーソナリティー改善プログラム


こちらは、日々の生活の中で、自分に課題を出してそれをこなすということで、主体的な自己決定の力とか、行動力や社会性などを高めていくトレーニングをします。

特に、大人の愛着障害の中でも「回避型」と言われる人に向いてます。


ただ、いくら自分で努力して改善しても、身近な人が不安定な愛着のままだと、あなたの足を引っ張ることで元に戻そうとするでしょう。

これは、心配とか愛と偽装した「虐待」であることを認識して、そのような虐待を許してはならないことです。

それこそが、自分を大事にする、安全基地を守る第一歩だと思います。


愛着が安定化するプロセス


では、今までのような取り組みによって、不安定な愛着の人はどのように変化していくのかをみていきます。
これは、愛着を築けなかった対象者との間のことだけでなく、他者との関わりによっても変化していくものです。

第一段階

さりげない会話や接触が増える

それまでは、何を言っても否定されたり、責められたりする関係の中で、その痛みを忘れるために何かに依存したりして逃避する行動ばかりでした。

それが、別の安全基地だったり、自分の視点を変えていくことで……

責められない、否定されない場だと思うことができたら、少しづつ会話などが自然にできるようになります。

ただ、どうしてもその相手に対する不信感が拭えないなら、無理してその関係にこだわる必要はないと思います。

別の安全基地を探したり、自分で立ち直るという選択をします。


第二段階

相互的な関わりが増える

さらに会話や関わりが増えていきます。

ただし、ちょっとしたことで後戻りするような危うさもまだまだあります。



第三段階

本音やトラウマを語る

いよいよ今までためてきた思いを語るときです。

これは、非常に危険な場面でもあります。

できたらトラウマを持つ人が「もう十分だ」と思うまで、語り続けることです。



第四段階

自分を振り返り問題に向き合い始める

不思議ですが、安定した愛着を手に入れると、今度は自らを振り返るようになります。

つまり、自己愛のところでぐるぐる回っていたところから、パーンと抜け出してもっと広い視点で自分を見れるようになります。

また、これは今まで自分の安全基地にこだわっていたところから、次は誰かの安全基地になってみようという気持ちが、芽生えてくるということでもあります。


第五段階

自分を変える行動が出てくる

自分に向き合い出すと、また、誰かの安全基地になろうとすると、思考や行動は全く違ってきます。



第六段階

小さな成功体験から自己肯定感を回復していく


これは、ほんの小さなことで良いので、ルーティンに加えていくことで、成功体験を積むことができます。

例えば、朝御飯の前に掃除をする、などで良いのです。



第七段階

人に対する思いやりや感謝の念が出てくる

このあたりになってくると、自分の過去の傷などを冷静に振り返ることができるようになります。

このようにトラウマを思い返すときに、恨みの念などが消えていくと、自分の力で立ち直ることができる能力があると思ってください。


第八段階

自分の中に安全基地を持つようになる


最初の話に戻りますが、安全基地がなぜ大切かというと、最終的に自分を信頼するために作るのです。

何か失敗をした時に、「やっぱりダメだ」と自分を責めるのではなく、「仕方ないよ。よくやった」と自分で支えることができたら、恥の意識も減って自分を頼れるようになります。

もちろん子供の時は、親の力が必要ですが、大人ならば自分で自分の中に安全基地を作ってしまうことが、最終目的です。

もちろんパートナーなどとの間で、安全基地を作るのも大切です。

でも、その原型として自分の安全基地がないと、不安定な愛着の人としかめぐり合えないのです。




トラウマの傷を癒す


途中で何度か出てきましたが、自分で気づいているのに、その悩みの沼から出られないのは、恨みや怒りの感情にどっぷりと浸かって出られないからだと思います。

まずは、それを出し切ることがすごく重要です。

カウンセリングや、パートナー、親友などによって語り尽くすことも可能です。

でも、いつまでも感情の沼から出られない人は、あまりにも長い期間、堂々巡りをしてしまうと、その大切な関係性すら危うくなってしまいます。

カウンセリングなども決して安いものではないでしょう。


そのような場合は、自分自身でブログなどを書くことによって、トラウマを語りつくすことが効果があると思います。

別にアップしなくても良いですし、情報漏洩が嫌ならばテキストに打ち込むだけでも良いです。

それを後で読み返すと、少し冷静にさっき言った認知の領域で、理解できるようになるかもしれません。

語ること、それは、アウトプットすること。

そして、それを振り返ることが大切です。

その相手は、いくらその張本人と克服したいと願ったとしても、不安定な愛着である人には無理な場合があります。

むしろ、今までの経験からも、「不安定な愛着の人が、あなたのトラウマを聞いてくれるはずがない」と実感しているはずです。

そこは、もう障害だと思って諦めるしかないと私は思ってます。……残念ですが。

エーリッヒフロムが言われていたのですが、「悩みがなかなか解決しない人は、今ある人間関係の中で解決しようとする」という傾向が強いそうです。

こうするとすでに与えらた人たちに「気づき」がないと、一向に前にも後ろにも動かないということになります。

例えば、生まれた実家の中でとか、結婚した相手との関係でなんとかしないと……、と考えるので、結局いつまでたっても何も変わっていかないということです。

この考えも、実は不安定な愛着を持つ人の特徴なんです。

不安定な愛着を持つ人は、最初に相手を理想化して、それが違うとがっかりするという繰り返しをしています。

例えば、恋愛するとき一気に盛り上がって、真っ先に冷めることはないでしょうか。

これが 理想化→幻滅 の繰り返しの良い例です。

つまり、がっかりしたくないなら、最初に過度な期待をしないことが大切なのです。

それは、例え家族であっても同じことなのです。

相手にその能力があるかどうか、これからは観察していきましょう。

そして、頼れない相手にこだわり続けるのは、おしまいにしませんか?


以上で終わります。ありがとうございました。

詳しくは岡田先生の愛着アプローチをご覧ください。

具体的なメニューなども載ってます。カウンセラーの方にもオススメです。


今日のオススメ

「恋に落ちる」と「本当の愛」の違い

 愛すること、生きること M・スコット・ペック 愛とは、自分自身あるいは他者の精神的成長を培うために、自己を広げようとする意志である。 これが、著者の定義です。 さらに具体的に、愛について説明があります。 1.行動は、目指していると思われる目標や目的によって定義される。 これは、...