あなたは、愛着という言葉を、聞いたことがありますか?
愛着とは、主に親などの養育者との関係の中で生まれる、安心できる関係性のことです。
これは、人間にとってその後の人生を大きく左右することになります。
悩みを抱えがちな人や、メンタルを病む人の多くは、この愛着がうまく築けなかった人に多いと、私は感じています。
こちらでよく取り上げる、ACもまさに愛着がうまく育つための環境がなく、そのような環境で生き延びる方法を覚えた結果、今でもいきづらい人のことだと、捉えています。
つまり、愛着を育てることができたら、生きるのもかなり楽になってくると思います。
今日は、そんな中で、愛着を育てるための方法、そして、特に自分できる方法を、お伝えしたいと思います。
愛着ができない理由
ところで、愛着についてあなたは何かしら知っていると思います。
でも、世の中には「愛着」と聞いても、意味がわからない人も多くいます。
この差は何だと思いますか?
「愛着」という言葉を知っているということは、(これは他のことにも言えますが)過去にそのことについて、立ち止まったか悩んだかによって、「愛着」という言葉にたどり着いたように思うのです。
それとは逆に、全く知らない人もいます。
そのような人は、きっと愛着について、立ち止まったこともなく悩んだこともない……と考えられます。
よく、子供が「愛着障害の疑いがある」と誰かに指摘されて、急いでネットで調べている人などは、まさにその典型だと思います。
私が重要だと思うのは、自分から「おかしい」と立ち止まった人かどうか……です。
つまり、気づきがある人は今は愛着がなくても、いつかは手に入れられると信じてます。
すでに気づいている人は、この時点で道半ばまで来ているということです。
安全基地と危険基地
ところで、あなたは「安全基地」を知ってますか?
安全基地は、まさに子供が秘密基地を作って遊ぶように、そこにいる限りは鬼は入ってこれないというような、まさに安全な場所です。
鬼が入ってくるならば、安全基地の管理人である親などが、すかさずそれを阻止してくれます。
だから安心して遊ぶことができます。
学校などでいじめられていても、家に帰ってきたら元気を取り戻すことができるのです。
でも、その場所の管理人が、危険を伴うことをしてきたらどうなるでしょうか?
それはそれは不安だし、怖いと思うのです。
これがまさに危険基地です。
でも、家の外からは誰も見えないので、そこが危険基地だと知っているのは、家族だけになります。
もし、あなたがもしくは子供が、本音を言わずに表面的な対応をしているなら、そこは危険基地の可能性があります。
なぜか?
危険だと感じているからです。
この思いはどうごまかしても、本当のことなのです。
つらければつらいほど、危険な人物にはつらいとは言えなくなります。
これこそが、愛着を育てるための安全基地を作ることに失敗した、ということになります。
この問題は、幼児期が終われば関係なくなるものではなく、大人になってもずっと人に心を開けずに、信頼関係の構築ができなくなってしまうことが、大きな問題です。
そして、そのまま結婚などをすると、同じように子供も信じられなくなったりして、愛着をうまく育てられなくなってしまうのです。
逆に、愛着が安定していると、安心感や自己肯定感が高まって、情緒的にも安定します。
さらに、知的・社会的にもどんどんチャレンジしようという気持ちになっていきます。
それは、失敗をしても揺らがない安全基地によって、自分を信頼できるからです。
そして、どんどん活躍の場を広げていけます。
不安定な愛着を持つ人
では、不安定な愛着を持つ人とは、どんなことになっているのでしょうか。
これは、あなた自身にも言えることかもしれません。
ただ、最初に言ったように「それに気づいているかどうか」が大事だということを、覚えておいてください。
不安定な愛着を持つ人は、世代間の連鎖という言葉を使うことも多いですが、その人も安全基地による支えを必要としている人、そのものです。
だから、自分で誰かを守ってやるなどできるはずがないのです。
相手が自分の子供であっても、その子が不調になってしまうと本来なら心配するものですが、不安定な愛着を持つ人は、安全基地が壊れていく恐怖が先に立ちます。
だから、その子供以上に不安になったり、心配したり、逆に腹立たしく感じたりしてしまうのです。
つまり、子供のSOSを、自分に対して脅かされたとか、足を引っ張られたとか、ないがしろにされてしまった、見捨てられてしまったという風に捉えるのです。
本来なら、不調を訴える子供からすると、最も優しさとか思いやりを求めるときに、さらに追い詰めたり、キレたりしてしまうのです。
このようなことが度々起こると、さすがに子供も「この人には頼れない」とか「この人はちょっと危険」などと無意識のうちに感じて、心を閉ざしていきます。
愛着の克服に必要なもの
今までいってきたように、不安定な愛着の元で育つと、自分も不安定な愛着になるという、自然な流れがあることがわかってきたと思います。
ただ、あなたがこの文章を読んでいるということは、自分に気づきがあり、すでに改善の道を半分くらいまで自分の力で登ってきていると思ってます。
つまり、それだけでも世代間の連鎖を断ち切り、自分の力で人生を切り開く力があるということです。
その上で、さらにその速度を速めていくには、どうしたらよいでしょうか?
このようなレジリエンスとか克服する力がある人の特徴として、このような言葉を使うことがあります。
リフレクティブ・ファンクションです。
これは、恵まれない環境でも、愛着が安定している人に共通している点として、リフレクティブ・ファンクション、つまり振り返る力が高いと言われてます。
また、不安定な愛着の人が、安定型の愛着に変化するときに高まるとも言われます。
これは、人間にとって非常に高いレベルの能力だと思います。
つまり、普通の人にはなかなか手に入れられないものです。
このリフレクティブ・ファンクションには、言葉の通りで反省とか振り返る力という意味があります。
これは、自分を責めるのとは全く違います。
自分にどんなことが起きていたのか、その時の感情はどうだったのか、などを正確に振り返ることです。
これが意外にできないものなのです。
ただ、私がいろんな方との交流の中で感じているのは、この能力は男性もしくは論理的な人などが強みがあるかも、ということです。
よくコメントなどをいただく中で、特に男性に多いのですが、長い潜伏期間を経てある日突然「覚醒」される人が多いことに気づきました。
これはどういうことかというと、長い時間をかけてリフレクティブ・ファンクションをして、何か行動を起こして、どんどん状況が変わっていくということなのです。
これは、自分のこともそうですが、自分のことを振り返ることができるようになると、次は相手からの視点で振り返ったり、全く違う人から視点で振り返ることもできるようになってきます。
- 自分を振り返る
- 相手の視点で振り返る
- 第三者の視点から振り返る
視点を変えて振り返る、これは自己犠牲になることではないので、そこは注意してください。
認知の三角形
これは、認知の三角形という図です。
こちらのサイトに来る男性の多くが、なぜある日 覚醒するのかというと、この感情と認知と行動の中で、どんどん認知を増やしていったからだと感じてます。
認知というのは、物事の受け止め方のことです。
この認知を、いろんな動画とか書籍などによって増やしていき、自分のこだわりから解放されていきます。
そして、「こんな考え方もあるんだ」と自分の思考を柔軟に広げていきます。
その結果、何かのきっかけで「そうか!」というようなブレイクスルーを体験して、自分にとってベストな答えを見つけます。
それは、親との話し合いとか、自立するとか、トラウマ返しなどかもしれません。
これは人によってそれぞれで、正解は本人しかわかりません。
その結果、今度は認知の三角形の中の、行動に移していくのです。
だから、パパッと解決してしまうことがあるのです。
逆に、私もそうですが女性は、この感情の部分だけにとどまって、溺れてしまうことが多いです。
そして、泥沼のようになかなか抜け出せなくて「無理かもしれない」と思ってしまうのです。
このようなかたは、ぜひ人を動かすのは感情だけでなく、認知と行動も同じくらい使っていく必要があることを、頭のどこかに置いておいてください。
そして、感情的になったときに、「認知は使ってる?」とか「行動できることは?」と視点を変える工夫をしてみてください。
これができるようになると、覚醒する可能性が高まります。
具体的な愛着を改善するアプローチ
不調を感じる人やSOSを出す人が子供の場合は、二つの方法があると言われます。
1. 愛着安定化アプローチ
こちらは、親などの代わりに臨時で安全基地を作ってあげることになります。
カウンセラーなどが、その子供の良い点に注目して関わって、安全基地を作ります。
2. 愛着修復的アプローチ
これに対して、不調を感じる人やSOSを出す人が大人の場合は、これにプラスして自分でもトレーニングをしていきます。
3. 両価型愛着・二分法的認知改善プログラム
これは、先ほどリフレクティブ・ファンクション(振り返る力)と言いましたが、これを鍛えて、自らの力で愛着を安定化していくという方法です。
特に、大人の愛着障害の中でも「不安型」「こだわり型」と言われる人に向いてます。
具体的にやること
両価型とはアンビバレンスつまり、本心とは逆の行動をとるという特徴があります。
これは、虐待(過保護も含めて)されたか、気分で養育態度を変えられて育った可能性があります。
だから、本心のままだと傷つくので、予測のできないことを受け入れるために身につけた生き方だと思ってください。
これは、自分が知らず知らずのうちにやっている反応の正体を認識することが重要です。
そして、それに気づけば反応を変えることができるようになります。
その一つ一つの成功体験で、「人生はうまくいくことができる」という実感を生みます。
特に、このようなタイプは、過剰に反応することが多いので、意識して「バランスよく」というのを心がけると、驚くほど周りの反応も良くなって生きやすくなります。
これは、自転車の運転を覚えた時を思い出して欲しいのですが、自転車に乗れるまでは大変ですが、一度乗れたらよっぽどのことがない限り忘れないものです。