闇教育とは、昔の教育学そのものです。
つまり、先生などがお手本にしている教育書そのものが、闇教育を推奨するような内容です。
日本語訳などが少ないのですが、アリス・ミラー氏はこのような闇教育が伝えられている書籍や論文を非常にいっぱい引用されています。
こちらはシュレーバー博士が教育者への忠告として書いたものです。(1858年)
精神的ー教育的な基本方針を固めるための最初の試みとして、理由もないのに泣いたりして自己主張をする幼い者の気ままを観察しなさい。別に何も足りないものはなく、窮屈だとか痛い思いをしている訳でもなく、病気でもないということになったら、こうやって泣き叫んでいるのは単なる気ままであり、むら気のなせる技なのであって、わがままの最初の現れなどだということがはっきりする。
こうなったらもはや始めのようにじっと待ったりしてはならないので、何らかの積極的な行動に出る必要がある。
速やかに子供の気を別のものに向けさせたり、厳しく言って聞かせたり、身振りで脅したり、ベッドを叩いたりして……、そうすることでは効き目がない場合には、ーーーもちろんそれほど強いことはできないにしても、赤ん坊が泣くのをやめるかもしくは眠り込むまで繰り返し、休むことなく、身体に感じる形で警告を発し続けるのが良い……このような手段は一回ないしせいぜい二回も用いれば充分なので、そのあとは間違いなく子供はあなたの思うままになる。
あなたの視線一つ、言葉一つ、ほんのわずかな叱責の身振り一つで子供を思うままに動かせるようになるのだ。
忘れてはならない、こうすることが子ども自身にも一番良いことなのである。
泣き叫んでばかりいては落ち着いた順調な成長は望むべくもないが、今や赤ん坊は泣き叫ぶことはなくなったわけであるし、しかもそれと同時に赤ん坊のうちに潜んでいるやっかいな強情も追い出されたのであるから、こうしなければこのやっかいものは、あっという間に根を張り、年とともにうち断ちがたい生命の敵となって生い茂ることになる。
これに対してアリスミラーは、このように感想を述べています。
シュレーバー博士は、自分が目の敵にして子どもたちの中から追い出そうとしているのが、本当は自分自身の衝動の反映なのだということに気が付いていません。彼は、自分のやっていることは、ひたすら子供のためなのだと信じて疑わないのです。
そして、実際の子供が成長しないように、弱い子供のままにしておくことで、自分を守ろうとしています。
このような利己的で目の前のことしか考えない思想が、「教育」となって世の中に浸透していったのです。
この時代(1858年当時)は、かなりあけっぴろげに大人の持つ課題を子供に押し付け、もしくは復讐の矛先を子供に向けるようなことを指示してます。
特に、体を傷つけるような虐待を勧めている内容が多いです。
しかし、時代が移り変わることで(それでも教育の進歩は遅いですが)徐々に、根本の思想はそう変わらないけど、(批判されないように)うまく隠すという技を覚え出します。
そして、叩いたりする虐待というよりも、真綿で首を絞めるようなモラハラのようなことを、教育だといってその方法を細かく説明してます。
でも、いくら時代が新しくなっても、子供の持つ生き生きとした感情や、「違う」と主張するような独自の個性や能力を、嫌う大人は変わらず大勢いるようで、「個性的な子供の芽を早くにとってしまおう」という暗黙の目的が、今でもあるように思います。
きっとそれも間違いなく、そう考える人たちの「課題」なのですが、それを必死で子供に置き換えているのです。
その善意という狂気の恐ろしいさなのです……